サテライトオフィスの選び方について解説。企業と従業員がともに納得のいくワークスタイルを目指すには?

2021年7月12日 2023年1月11日

ワークスタイルの変化によって、より柔軟な働き方が求められるようになってきました。各企業、ニューノーマルな働き方に適応できるようオフィスやワークプレイスの見直しを迫られています。さて、サードプレイスとして注目を集めているレンタルオフィスやシェアオフィスですが、サテライトオフィスとしての用途に使えることを前回のコラムで少しお話ししました。今回は外部運営会社のサテライトオフィスを利用する場合の選ぶポイントや、活用事例についてもう少し掘り下げて話をしていきたいと思います。

企業も従業員もともに利点を得られるサテライトオフィスとは、どのようなものになるでしょうか?外部運営会社のレンタルオフィスやシェアオフィスを、企業がサテライトオフィス用途として使う場合について考えてみました。

まずはじめに、企業・従業員それぞれからの視点から見たサテライトオフィスのメリットとデメリットについてまとめてみました。
勤務時間の短縮は一番のメリットでしょう。近頃では「タイパ」などと呼ばれることもあるそうですが、タイムパフォーマンスが良くなりその分、業務やプライベートに時間を割くことができますので従業員の満足度を上げる効果もあります。企業にとっては通勤費のコストカットが期待できるでしょう。その他、人材の確保といった面や、在宅勤務に比べオフィス環境が整っていることから生産性の向上も期待できるようです。また複数のサテライトオフィスを利用することにより、オフィスの分散化を図ることができます。これはBCP対策(事業継続計画)に好影響で、万が一の緊急時であってもオフィスを分散化させておくことで一部の拠点がダウンしてももう一方でカバーすることが期待できます。有効なリスク回避対策のひとつです。
良いことばかりお話ししてきましたが、もちろん懸念事項もあります。
まず、サテライトオフィスの利用が効果的な企業や業種、業態でなければ、生産性の向上を期待できません。

企業にとってのメリット・デメリット
【メリット】
✅ 自社オフィスの縮小によるコスト削減が可能
✅ 通勤時間等の時間短縮による、交通費削減
✅ 育児や介護による職離れ防止
✅ オフィス分散化によるBCP対策(事業継続計画)が可能
✅ 整ったオフィス環境の確保により、生産性の向上

【デメリット】
✅ 費用が高額になる場合がある
✅ 従業員が使っていない、勤怠管理が不明確になる場合がある
✅ 情報漏えいリスクがある

従業員にとってのメリット・デメリット
【メリット】
✅ 働く場所の柔軟性によるワークライフバランスの改善
✅ 通勤時間等の時間短縮による、従業員のパフォーマンス向上
✅ 育児や介護でも仕事の継続が期待
✅ 整ったオフィス環境の確保により、モチベーションアップ

【デメリット】
✅ 満席で使えない場合がある
✅ 業務の進捗管理が難しくなる
✅ コミュニケーション不足により孤独感を感じる

従業員が利用するにあたり、企業はどのような点をポイントにしてサテライトオフィスを選ぶか考察したいと思います。

(1)アクセスの良い場所にあること
    従業員が利用しやすく通勤しやすい場所にあることは、最も重視される用件の一つです。
    大企業であれば従業員のワークプレイスを確保するため、郊外型も含め複数施設が利用出来るサテライトオフィスを選ぶでしょう。一方でオンライン会議だけでは不十分、従業員とのコミュニケーションも一定必要と考える企業では、都心の主要ターミナル駅近くに存在し、個室型やミーティングルームが利用出来るサテライトオフィスを選ぶことになります。
(2)支払い方法が請求書払いであること
    利用するたびに、従業員が現地で支払うシステムの場合、企業側はコスト管理がしにくいものです。また従業員も経費精算をしなければならず、気軽に使うことができないかもしれません。
(3)従量課金が発生しないこと
    また、コスト面の管理としても、全社員の各サテライトオフィス(レンタルオフィス)での施設利用時間、金額などのコスト計算が大変になると、総務の負担が過大になります。使った分だけ請求される従量課金制度は明快に思えますが、裏側では、総務が施設オフィス専用の複雑な管理画面にログインし、プロジェクトがマイナスにならないようにコスト計算し、今月いくら分を利用しているかをプロジェクトの責任者へ通知している、という事実も存在しているようです。
(4)利用時間/営業時間が合っていること
    各運営会社によっていサテライトオフィス(レンタルオフィス)の運営時間にはかなり違いがあります。24時間使えるところもあれば、8時~20時迄などと時間の区切りがあるオフィスもあります。自社に合ったオフィスを選びましょう。
(5)セキュリティ面が安心なこと
    セキュリティのかかるプライベートの個室や執務室があるか、確認しましょう。集中できる空間がないと、安心してサテライトオフィス(レンタルオフィス)で仕事ができません。
(6)ワークスペースとしての環境が整っていること
    インターネット環境や什器は整っていますか?賃貸事務所のように、独自で光回線を引き込むことを許可しているサテライトオフィス(レンタルオフィス)もあります。必要な場合は事前に問い合わせてみましょう。
(7)会議室やウェブブースなどが充実していること
    ビジネスに必要不可欠な、会議室やウェブブースは幾つありますか?その他の共有設備の充実度も、実際に見学し確認しましょう。
(8)いち契約するだけで、日本国内の複数拠点のオフィスが使えること
    サテライトオフィス(レンタルオフィス)の最大のメリットは、自社で多くのサテライトオフィスを用意せずとも、国内にある複数拠点をサテライトオフィスとして使えることです。どのエリアのオフィスが使えるのか、事前にチェックしておきましょう。
(9)サテライトオフィスの雰囲気が自社に合っていること
    サテライトオフィス(レンタルオフィス)は元々、スタートアップや零細企業が使うオフィスとしてスタートしています。活気あるオフィスが、逆に自分たちにとってはうるさく感じたりすることもあります。相性の良し悪しはあるものです。どのような雰囲気なのか、確認してくことをおすすめします。

新しい働き方の浸透で、働く場所に対する私たちの考え方にも変化がありました。そこで、次にニューノーマル時代の働く場所について考えてみたいと思います。

「ニューノーマル」という言葉は「新しい生活様式」とも言われ、New(新しい)とNormal(常態)から来る造語で、社会全体に大きな変化が起こり、変化が起こる以前には戻れず、新たな常識が定着し当たり前になってしまうことを指します。変化前には戻れないというニュアンスを含んでいることがポイントです。

コロナ感染拡大後にニューノーマルとなった働き方と言えば、「テレワーク・在宅勤務・ハイブリッド型ワーク」がその代表でしょう。

✅ テレワークや在宅勤務は当たり前の時代
✅ 営業活動・商談はウェブ会議が当たり前の時代
✅ 会議や採用面接だってオンラインは当たり前の時代
✅ 場所にとらわれない働き方ができるのが当たり前の時代

これらが当たり前となった時代では、広い自社オフィスは活用しきれず手放す企業も多いと聞きます。自社オフィスが都心ともなると賃貸料の負担は企業にとって大きくのしかかってきます。フル稼働されない自社オフィスに頭を悩ます企業が多い中、リアルオフィスとしてサテライトオフィスを選択する企業は増加傾向にあります。

当初は戸惑いや不安があったものの、リモートワークや在宅勤務が定着し、多くの企業で生産性や経費削減効果などの一定の成果が出ました。労働時間の管理や評価に対しては、課題が残るものの、ここ数年で企業は「リスクヘッジのためにオフィスを分散化」し「リモートワーク・在宅勤務・サテライトオフィスの利用」またはそれらを組み合わせた働き方を推進しました。
在宅勤務だけでは家庭の事情などにより同じ成果を求められるのは難しいと思われる従業員も、より自宅近くのビジネス環境が整ったサテライトオフィスを企業が用意することによって、働く時間と場所を有効活用でき、モチベーションを保って結果を出すことが期待できるのです。
このように一定のビジネス環境が整った空間さえ準備できれば、業務はどこでもできることになり、今までの一点集中的な自社オフィス勤務に完全に戻ることはないでしょう。レンタルオフィス・シェアオフィス・コワーキングスペースの需要と供給は成長し続けています。今後も、柔軟な働き方はますます広がりを見せ、サテライトオフィス用途としてのレンタルオフィスもその一役を担っていくことでしょう。