オフィスの災害対策|防災体制の重要性と実施すべき5つの対策
2024年5月7日
いつ起こるかわからない災害だからこそ、日頃から備えを徹底しておく必要があります。企業経営者は、オフィスの防災体制(企業防災)を整えましょう。
オフィスの防災体制(企業防災)とは、従業員の安全を守り自社設備への被害を最小限にするための取り組みです。災害にはいくつか種類があり備え方はそれぞれ異なります。事前の備えはもちろん、災害発生時の対応もイメージしておくことが大切です。
今回は、企業が対策すべき災害の種類とオフィスで実施すべき災害対策を解説します。
1. オフィスの防災体制(企業防災)が重要な理由
企業には、従業員の安全を守る社会的義務があります。
労働契約法で定める従業員の安全配慮義務の内容は、下記の通りです。
オフィスの防災体制(企業防災)を整えることは、従業員の安全を守る上で非常に重要です。窓ガラスや照明が割れたことによるケガや避難途中の転倒によるケガをしないように、企業は日頃から防災体制(企業防災)を徹底しなければなりません。 災害対策基本法で定める防災の定義は、下記の通りです。
防災体制(企業防災)に取り組むことで、人的被害はもちろんパソコンやコピー機などの物的被害も最小限に抑えられます。物的被害は業務再開に大きく影響するため、円滑に業務再開できるように対応をイメージしておきましょう。
近年では、防災や減災を目的として地域自治体と「地域防災協定」を締結する企業が増加しています。地域と企業が手を取り合って防災や減災に取り組むことは、多くの人々の安全を守るために効果的です。
災害時に適切な顧客対応や地域貢献をすることで、ステークホルダーからの信頼獲得にもつながります。
2. 災害の主な種類
災害対策基本法で定める災害の定義は、下記の通りです。
災害は、自然災害・人為災害・特殊災害の3種類に分けられます。 以下では、3つの災害について詳しく解説します。
(1)自然災害
自然災害は、自然現象によって起こる災害です。自然災害の原因となる主な自然現象は、下記の通りです。
自然災害には、事前にある程度予測できる災害もあれば、予測が難しい災害もあります。
(2)人為災害
人為災害は、人為的なきっかけで起こる災害です。人為災害は、以下の5つに分類されます。
都市災害 | 大気汚染、火災、騒音 |
---|---|
労働災害 | 勤務中の負傷や病気の発症 |
交通事故 | 車や電車などの事故 |
管理災害 | 操作ミスや管理不備 |
環境災害 | 環境破壊 |
人為災害は、災害の範囲が広いことが特徴です。不注意やミスが原因で起こるケースが多く、災害の発生を完全に防ぐことは難しいと言えます。
(3)特殊災害
特殊災害は、有害物質の漏洩やテロなどが原因で起こる災害です。特殊災害の具体例は、下記の通りです。
● 病原体への集団感染
● 原子力事故
● 核兵器を使ったテロ
● 事故やテロによる爆発
インフルエンザウイルスへの感染や事故による爆発は、オフィスや身近な場所で起こる可能性が十分あります。
2-1. 企業が特に対策すべき3つの災害とは
あらゆる災害の中でも、火災・水害・地震は企業で起こる可能性が比較的高い災害に分類されます。3つの災害は、企業が常に対策すべき災害です。
それぞれの災害が起こる原因と対策が必要な理由は、下記の通りです。
●火災
オフィス内では、誤ったタコ足配線や電気コードの劣化による漏電などが原因で火災が起こることがあります。密閉された空間で火災が発生すると、短時間で煙が充満して逃げ遅れたり煙を吸ったりする危険があります。
●水害
川沿いやベイエリアにあるオフィス、周辺にアンダーパスがあるオフィスでは、台風や豪雨による洪水や浸水などの災害に注意が必要です。水の力は大きく、人やオフィス家具は簡単に流されてしまいます。水かさが増すとオフィスのドアが開かなくなることもあるでしょう。
●地震
地震が起こると、オフィス家具やOA機器が倒れて従業員や来客者がケガをするリスクがあります。停電やエレベーター内の閉じ込めなどが発生すると、従業員の精神的な不安はさらに大きくなるでしょう。
3. オフィスで実施すべき災害対策5選
企業が取り組む災害対策はさまざまあります。しっかり防災体制(企業防災)を整えておくことで、万が一のときに適切な対応を取りやすくなります。 災害はいつ起こるかわからないため、早期に必要な対策を講じておきましょう。 ここでは、オフィスで実施すべき災害対策を5つ解説します。
3-1. BCPや防災マニュアルの策定
災害に備えて、BCPや防災マニュアルを策定しましょう。
BCPは「Business Continuity Planning」の略で、緊急事態における事業継続計画を意味します。防災マニュアルは、事業と従業員を災害から守るための行動をまとめたものです。
災害発生時の対応や事業継続計画をまとめておくことで、事業への被害を最小限にして速やかに業務再開を目指せます。
ただし、従業員に周知できていなければBCPや防災マニュアルは役に立ちません。実際に活用して訓練を行うことも大切です。
3-2. 防災グッズの備蓄
災害で従業員が帰宅困難になったときのことを考えて、防災グッズを備蓄しておきましょう。災害時に従業員が一斉に帰宅すると救護活動の妨げになる可能性があることから、企業は従業員のむやみな移動を控えさせなければなりません。
備蓄しておくべき主な防災グッズは、下記の通りです
● 食料
● 懐中電灯や簡易照明
● 非常用発電機
● 消火器
● ヘルメット
● 救急セット
● 簡易トイレ
● トイレットペーパー
● 生理用品
水や食料は、1人あたり3日分を想定して備えておく必要があります。水は、1人あたり1日3Lが目安です。 ヘルメットや懐中電灯は、安全に避難するためにも役立ちます。
3-3. オフィス設備の定期点検・整備
オフィスに設置されている消防設備は、適切な管理と定期的な点検が必要です。 オフィスの消防設備は、建物の関係者が定期的に点検して消防長または消防署長に報告しなければなりません。
(出典:e-Gov法令検索「消防法」/ https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC1000000186)また、電源タップやコンセント部分に埃が溜まると火災の原因になるため、定期的に掃除して異常がないか確認しましょう。使っていないコンセントにはキャップをしたり、劣化の進んだ電源タップやコンセントは定期的に交換したりすることも大切です。
3-4. オフィス家具の安全対策
地震の揺れでオフィス家具が動くと、ケガの原因になるだけでなく通路を塞いで避難できなくなる可能性があります。オフィス家具が倒れないように、あらかじめ耐震器具で固定しておきましょう。
キャビネットなど壁に接している家具は、つっぱり棒やL字金具、転倒防止ストッパーなどで固定します。収納扉が開くと中身が飛び出してしまうため、耐震ラッチを取り付けておきましょう。
また、キャビネットやデスク上のOA機器が落下しないように、固定バンドやジェルマットで対策しておくことも大切です。
3-5. 非常時における連絡体制と避難経路の確保
災害発生時の被害を最小限に抑えるには、連絡体制の確保と避難経路の確保が必須です。 災害発生時は、通信障害により携帯電話が使えなくなる可能性があります。社外にいる従業員とも連絡が取れるように、デジタル無線や安否確認アプリなどの連絡手段を確保しておきましょう。 避難経路の付近には荷物を置かず、災害発生時に速やかに避難できる状態を維持します。避難経路は従業員に周知して定期的に避難訓練を実施しておくと、災害発生時のパニックを防ぎやすくなります。
4. まとめ
企業には従業員の安全配慮義務があるため、万が一の災害に向けて対策を講じておくことが大切です。災害にはさまざまな種類があり、企業は特に火災・水害・地震への対策が求められます。
オフィスで実施すべき対策には、BCP・防災マニュアルの策定、防災グッズの備蓄、オフィス設備の定期点検などが挙げられます。非常時の連絡や避難がスムーズにできるように、連絡手段と避難経路の確保も大切です。人的被害・物的被害や損失を最小限に抑えるためにも、防災体制(企業防災)を強化しておきましょう。