【レンタルオフィス入居者向けコラム】一人オーナー法人の課税について

2010年9月28日

起業をお考えの方から、
「個人事業者として開業するのと法人を設立するのでは、
どっちが得でしょうか?」
というご質問を受けることがあります。

一人オーナー(法人の代表者が1名:100%株主)の場合について
シミュレーションをしてみましょう。

売上=100、経費を40とします。

◆個人事業主の場合

・売上100 - 経費40 = 利益60

利益60が『所得税』の課税対象となります。

◆法人の場合

・売上100 -(経費40 + 役員報酬50)= 利益10

利益10が『法人税』の課税対象になります。

また、法人で経費とした役員報酬は、個人の給料所得となります。
給料所得には、所得税の計算上、経費とみなしてくれる
給与所得控除分がありますので、

・役員報酬50 - 給与所得控除10 = 給与所得40

給与所得40が『所得税』の課税対象となります。


その結果
◆個人・・・課税対象は60(所得税)
◆法人・・・課税対象は10(法人税)+40(所得税)=50

所得税と法人税は全く別のものですので、単純に比較できませんが、
同等の税率と仮定すると、個人は課税対象が10多い、
という状況になってしまいます。

これが会社設立のメリットでもあったわけですが、
平成18年に会社法が成立し、資本金1円で簡単に株式会社を作れるようになり、
「個人事業主との課税の不平等に手をうたなきゃ!」
というわけで、一人オーナー会社への課税制度が平成18年度に導入されました。

簡単にいうと、
「法人で経費としたオーナーの役員報酬の給与所得控除分を
法人税の計算上は損金不算入にする(経費にできない)」という制度です。

しかし、個人事業主と法人の課税の不均衡を是正する手法として
適当なのかどうかという批判もあるため、
平成22年度税制改正で廃止となりました。

ただし、今年度に限っては廃止ですが、
二重控除(法人税での経費で控除して、かつ給与所得控除)について
平成23年度の税制改正で抜本的措置を講じると明言されているので、
なんらかの制度が発表されると思います。


では、冒頭の質問に戻ります。

「Q:法人と個人事業主はどっちが得?」

「A:・・・得かどうかを簡単に判断するのはむずかしい。    しかし、法人のほうが信用はあると判断される・・・かも???」