2023年4月11日 2025年11月27日

バーチャルオフィスは、物理的なオフィスを構えずに事業用の住所や電話番号を借りられ、法人登記もできるサービスです。郵便物の受け取り・転送や、電話の転送・代行をはじめ、多彩なサービスを提供しており、特に初期費用を抑えたい事業者に人気です。
当記事では、バーチャルオフィスの基本的なサービス内容や利用するメリット・デメリット、そして選び方のポイントについて詳しく解説します。バーチャルオフィスに興味がある方や利用を検討している方は、ぜひご一読ください。
1.バーチャルオフィスとは?
2.バーチャルオフィスのサービス内容
3. バーチャルオフィスと他のオフィス形態との違い
4. バーチャルオフィスを利用するメリット
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4-1. コストを抑えられる
4-2. 一等地の住所を利用できる
4-3. 法人登記に利用できる
4-4. 自宅の住所を公開する必要がない
4-5. すぐにビジネスをスタートできる
4-6. バーチャルオフィスの利用料は経費として計上できる
4-7. 短期でも利用できる
4-8. ミーティングスペースや作業スペースを利用できる場合もある
4-9. 固定電話やFAXの番号を導入できる
4-10. さまざまなオプションを活用して効率良く業務を進められる
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5-1. 作業スペースは別で確保する必要がある
5-2. インターネット検索でバーチャルオフィスであることが知られる
5-3. 業種によっては許認可を受けられないケースもある
5-4. 場合によっては法人登記が認められないケースもある
5-5. 他社と住所の重複が発生する可能性がある
5-6. 郵便物や宅配物への対応が遅れる可能性がある
5-7. 信頼性が低いと見なされる可能性がある
5-8. オフィスが廃業した場合さまざまな手続きが必要になる
-
9-1. 住所や電話番号に問題がないか
9-2. サービスの過不足がないか
9-3. サービス内容と料金が見合っているか
9-4. 企業イメージに影響する不安要素がないか
9-5. 実績のある会社が運営しているか
9-6. 利用者からの口コミはどのようなものか
9-7. 受取不可の郵便物や宅配便はどのようなものか
9-8. ミーティングスペースやシェアオフィスは併設されているか
9-9. 基本料金に含まれるサービスはどのようなものか
9-10. 解約の条件はどのようなものか
9-11. 有人・無人どちらで運営しているか
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11-1. バーチャルオフィスを契約する
11-2. 設立する会社の基本情報を取りまとめ定款を作成する
11-3. 会社実印を作成する
11-4. 定款の認証を受ける
11-5. 資本金の払い込みを行う
11-6. 法人登記に必要な書類を作成し登記申請する
1.バーチャルオフィスとは?
バーチャルオフィスは、実際にオフィスを構えずに事業用の住所を借りられるサービスです。
バーチャルオフィスの契約者は、実在する住所を利用して郵便物の受け取りや法人登記、銀行口座の開設などができます。自宅の住所を公開せずに事業を展開できるため、個人事業主や小規模事業者にとって便利な選択肢の1つです。
なお、オンライン上に作成した「業務用の仮想オフィス」をバーチャルオフィスと呼ぶ場合もあります。オフィスサービスであるバーチャルオフィスと、オンライン上の仮想オフィスであるバーチャルオフィスは似ているものの、意味合いがやや異なることを覚えておきましょう。
2.バーチャルオフィスのサービス内容
バーチャルオフィスの主なサービスは、「住所の貸し出し」です。
事業用の住所を得ることにより、利用者は郵便物の受け取りや法人登記、銀行口座の開設などのさまざまなサービスを利用できます。
バーチャルオフィスの提供するサービスは、基本料金に含まれるサービスとオプション料金で利用できる有料オプションの2種類です。ここからは、基本料金に含まれることの多いサービス4つと、オプション料金に含まれることの多いサービス3つを紹介します。
2-1. 基本料金に含まれることの多いサービス3つ
バーチャルオフィスの基本料金に含まれることの多いサービスとして、以下の3つが挙げられます。
●郵便物の受取・転送
バーチャルオフィスでは、郵便物の受取・転送サービスが基本料金に含まれるケースが大半です。利用者の代わりに取引先や顧客からの郵便物を受け取り、指定の住所へ転送します。
ただし、郵便物が一定の重量やサイズを超える場合、プランによっては別途手数料がかかることに注意しておきましょう。また、郵便物の転送方法や頻度は提供会社によって異なるため、契約前に確認が必要です。
●電話番号・FAX番号の貸与
多くのバーチャルオフィスは、住所とともに電話番号やFAX番号の貸与サービスも提供しています。法人登記や法人口座の開設時に求められる連絡先の確保には、必須のサービスと言えるでしょう。新しく電話番号を引くためのコストや手間を省ける上、固定電話番号をもつことで取引先や顧客からの信頼を得やすくなります。
●電話の転送・代行
バーチャルオフィスの基本サービスには、電話の転送や代行が含まれる場合もあります。指定の番号にかかってきた電話を登録した番号に転送したり、オペレーターが代わりに電話対応を行ったりするサービスです。
これにより、事業用に固定電話の番号を利用しつつも自宅や私用のスマートフォンでの対応が可能となり、重要な連絡を見逃す心配もありません。ただし、基本料金が低めに設定されているプランの場合、電話の転送や代行はオプション扱いになるケースもあるため、事前の確認が必要です。
2-2. オプション料金に含まれることの多いサービス4つ
バーチャルオフィスでは、基本料金に加えてオプション料金が発生する以下のようなサービスも提供されています。
●法人登記の代行
法人登記の代行は、会社設立時の煩雑な手続きを代わりに行ってくれるサービスです。法人登記の際は、膨大な書類を準備した上で管轄の法務局に出向く必要がありますが、作業は専門的で時間がかかります。
法人登記代行を利用すれば、書類作成や提出の手間を省けるため、本来の事業に集中できるでしょう。特に法的手続きに不安のある方や、手続きにかかる時間を節約したい方におすすめのサービスです。
●税務・経理・会計・労務に関する代行・サポート
税務や経理、会計、労務に関する業務は、事業運営に欠かせません。しかし、専門知識が必要であり、処理を間違えると法令違反と見なされるリスクのある作業です。
バーチャルオフィスの中には、税理士や会計士と連携し、これらの業務を代行するサービスを提供しているところもあります。経理・会計業務の代行を依頼すれば、ミスを減らしつつ、税務調査や罰金などのリスクを低減できるでしょう。記帳や決算、確定申告など、特定の時期や業務に限定しての依頼も可能です。
●融資・補助金・助成金に関する申込サポート
事業を展開する上で、融資や助成金、補助金の申請は重要な資金調達手段です。しかし、数多ある支援策の中から自社が受けられる制度やサービスを探し、それぞれの要件を確認、必要書類を用意するのは非常に手間がかかります。
バーチャルオフィスでは、行政書士や司法書士と連携し、これらの申請をサポートするサービスを提供しているところも珍しくありません。本来の事業に専念しつつも申請漏れを防ぎ、資金調達の機会を逃さないためにも役立つサービスです。
●会議室・打ち合わせスペース利用
バーチャルオフィスのサービスには、会議室や打ち合わせスペースの利用が含まれているプランもあります。会議室や打ち合わせスペースの利用は、ビジネスの信用度を高めるためにも重要です。
このサービスを利用することで、取引先や顧客との対面での打ち合わせや商談を行う場所を確保できます。サービスによっては、ワーキングスペースを提供しているプランもあり、物理的なオフィススペースを必要とする場合に便利です。利用条件や料金は提供会社によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
3. バーチャルオフィスと他のオフィス形態との違い
バーチャルオフィスと他のオフィス形態にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、バーチャルオフィスと代表的な4つのオフィス形態との違いを、機能やコスト、使い方の観点からわかりやすく解説します。
3-1. メタバースオフィスとの違い
メタバースオフィスは、仮想空間上にオフィスを設置できるサービスです。オンライン上でアバターを使って業務を行い、距離が離れていても同じ空間にいるかのような感覚でコミュニケーションが取れます。
例えば、離れたメンバーとリアルタイムで会話ができたり、アバターに表情が反映され臨場感を演出できたりします。ただし、あくまでも仮想空間上のサービスであり、実際の住所を取得することはできません。
一方、バーチャルオフィスは法人登記や郵便物の受け取りなど、現実のビジネス活動に直結する住所利用が可能です。仮想の世界を活用したメタバースオフィスとは、用途と目的が大きく異なります。
3-2. レンタルオフィスとの違い
レンタルオフィスは、実際に業務を行うスペースを借りられるオフィス形態です。
デスクや椅子、Wi-Fiなど業務に必要な設備が整っており、共用の複合機や会議室を利用できるのが一般的です。実際に物理的空間を利用できる分、費用はバーチャルオフィスより高めの傾向があります。
それに対してバーチャルオフィスはあくまでも住所利用に特化したサービスであり、作業場所は提供されません。レンタルオフィスに比べるとコストは抑えられるため、バーチャルオフィスの住所を業務用としつつ、実際の業務は自宅で行いたい場合などに向いています。
3-3. 賃貸オフィスとの違い
賃貸オフィスは、自社専用のオフィス空間を契約して使用する形態です。自由にレイアウトや内装を変更できる一方で、費用や契約条件のハードルは高くなります。
例えば、家賃の他に敷金・礼金・保証金などが必要で、初期費用は高額になりやすい傾向があります。また、契約期間が長期に設定されているケースも少なくありません。
一方のバーチャルオフィスは、登記や郵便物受取など機能を最低限に絞っており、契約期間も柔軟に決められることが多く、低コストで利用できます。初期費用を抑えつつ、法人登記用の住所を使いたい場合に適しています。
3-4. シェアオフィスとの違い
シェアオフィスは、複数の利用者が同じ空間を共有して業務を行うオフィス形態です。一般的には、個室ではなくオープンスペースが提供されます。
他の利用者と同じ空間を使うためコストは抑えられる一方で、個室がないためセキュリティや機密性には注意しなければなりません。作業スペースとしては利用しやすく、会員制の施設も多くあります。
なお、バーチャルオフィスの中には、シェアオフィススペースを併設しているところもあります。普段は住所利用のみ、必要なときだけシェアオフィスで作業といった使い分けも可能です。
4. バーチャルオフィスを利用するメリット
バーチャルオフィスの利用者が増加しているのは、仮想オフィスならではの使い勝手の良さやメリットがあるためです。 ここからは、バーチャルオフィスを利用するメリットを紹介します。
4-1. コストを抑えられる
バーチャルオフィスを利用することで、オフィス運用にかかるコストを削減できます。
物理的なスペースを貸し出すオフィスを利用する場合、初期費用がかかるケースが多く、月額料金も高くなりがちです。特に賃貸オフィスの場合には、敷金や礼金、保証金などが必要になるケースが多いでしょう。
一方バーチャルオフィスは、物理的なスペースを必要としないため月額料金は数千円程度から利用できます。また、初期費用が不要な施設も少なくありません。
特に開業したばかりの個人事業主やスタートアップにとって、オフィス維持費は大きな負担となることがあります。バーチャルオフィスを活用すれば、最低限のコストで法人登記や事業運営に必要な環境を整えられるため、手元資金を本業や集客に集中させることができ、事業の安定化につながるでしょう。
4-2. 一等地の住所を利用できる
信頼性の高い事業を目指すうえで、拠点として記載する住所は重要な要素です。バーチャルオフィスの大きな特徴として、東京・大阪・名古屋などの都心一等地の住所を低コストで使用できる点が挙げられます。一等地の住所を名刺や会社案内、Webサイトに記載することで、クライアントや取引先に対する信頼感が向上し、ブランディングにも効果を発揮します。
仮に自宅住所を登記や公開用に使用する場合、セキュリティやプライバシーの懸念があるほか、ビジネスに対する信用力にも影響が出ることがあるでしょう。しかし、一等地の住所を利用すれば「しっかりした会社」という印象を与えることができ、初対面の相手にも安心感を持ってもらいやすくなります。
4-3. 法人登記に利用できる
バーチャルオフィスの住所は、法人登記に利用できるケースも多々あります。法人として営業したいときや、マンションの規約で自宅住所を法人登記できないときには、バーチャルオフィスの利用が便利です。
ただし、法人登記が別料金となるケースもあるため、バーチャルオフィス契約時には必ず条件面を確認しておきましょう。
4-4. 自宅の住所を公開する必要がない
自宅の住所を事業のために利用することに抵抗をもつ方も多くいるでしょう。 バーチャルオフィスを契約すれば、自宅住所を公開する必要はありません。バーチャルオフィスの住所はホームページや名刺にも掲載できるため、プライバシーをしっかりと守れます。個人事業主や小規模で起業したい方にも、バーチャルオフィスの利用は向いています。
4-5. すぐにビジネスをスタートできる
デスクやチェアなど事業所の設備を準備する必要がないのも、バーチャルオフィスのメリットです。
バーチャルオフィスの住所を使用し自宅ですぐにビジネスをスタートさせられるため、起業の手間がかかりません。 固定電話やFAX番号などの導入サービスを提供している業者も多く、手続きを委託できる分さらにスピーディにビジネスの準備を整えることができます。
4-6. バーチャルオフィスの利用料は経費として計上できる
バーチャルオフィスの利用料は、通常、事業経費として全額計上が可能です。経費として計上することで総所得を抑えられるため、節税効果が期待できます。
基本的に、バーチャルオフィスの利用料は家賃ではなく事業に必要なサービスの利用料として扱われるため、「支払手数料」への仕分けが一般的です。ワーキングスペースも利用するなら「賃借料」で計上する場合もあります。不安な場合は、税務署や税理士に一度相談するとよいでしょう。
4-7. 短期間でも利用できる
バーチャルオフィスは、月単位で契約できるプランが多くあります。例えば賃貸オフィスでは2年間などの長期契約が前提となるケースもありますが、バーチャルオフィスでは数ヶ月単位でも利用しやすく、必要な期間だけピンポイントで契約可能です。
例えば、新しい事業を試験的に始める段階や、イベント開催に伴って一時的に住所利用が必要なケースでも利用しやすいでしょう。契約終了後も解約がスムーズなため、事業フェーズに合わせてフレキシブルに対応できるのは、リスクを抑えて起業したい人にとって大きな利点だと言えます。
4-8. ミーティングスペースや作業スペースを利用できる場合もある
バーチャルオフィスの中には、会議室や作業用スペースを併設している施設もあります。
通常は住所や郵便転送のサービスをメインに利用し、クライアントとの打ち合わせや資料作成などの業務を行いたいときだけスペースを時間単位で利用することも可能です。
施設によっては、月額料金の中に一定時間分の会議室利用が含まれていたり、別途オプションで追加できたりと、プラン構成も多様です。オフィスを日常的には必要としないけれど、不定期で対面での業務が発生するというケースでは、コスト効率の高い選択肢となるでしょう。
利用頻度や目的に応じて最適なプランを選択することが重要です。
4-9. 固定電話やFAXの番号を導入できる
法人運営においては、連絡手段の整備も信頼の構築に重要な要素です。バーチャルオフィスでは、固定電話やFAX番号を提供するサービスも存在します。個人の携帯電話ではなく地域の市外局番付きの電話番号を使用することで、法人としての体制を整えることができ、取引先からの信頼度も高まるでしょう。
また、プライバシーの観点からも、個人番号をビジネスに使わずに済む点は安心です。さらに、電話応対代行や転送、FAXの受信データをメールで受け取れるなど、業務効率を支える細かなサービスが充実している施設も少なくありません。事務員を雇わずとも外部との連絡体制をしっかり確保できるため、少人数の事業でも信頼性と効率性を両立できます。
4-10.さまざまなオプションを活用して効率良く業務を進められる
バーチャルオフィスでは、基本サービスに加えて豊富なオプションを用意しているケースも多くあります。オプションサービスを上手に活用することで、事業運営の手間を削減できます。
例えば、法人登記代行のサービスを利用すれば、面倒な手続きを依頼できるため起業準備の負担を軽減できるでしょう。また、税理士との提携による記帳・確定申告支援、補助金申請のコンサルティング、ビジネスサポートのためのセミナー提供など、幅広い支援が展開されている施設もあります。
必要に応じて自社の体制に合ったオプションを追加していくことで、最小限のリソースで最大限の成果を上げられる点も、バーチャルオフィスの大きな魅力です。
5. バーチャルオフィスを利用する際の注意点
バーチャルオフィスの利用には、一等地で手軽にビジネスを始められるという大きなメリットがある一方で、いくつかのデメリットも考えられます。 ここからは、バーチャルオフィスのデメリットを紹介します。
5-1. 作業スペースは別で確保する必要がある
バーチャルオフィスはレンタルオフィスと異なり、作業スペースの使用は基本的にできません。作業や会議、打ち合わせのためのスペースがなく、不便を感じることもあるでしょう
作業スペースや会議スペースが必要なときには、別料金で作業ブースやスペースを借りられるサービスを利用することがおすすめです。
5-2. インターネット検索でバーチャルオフィスであることが知られる
現代では、企業の住所をインターネットで簡単に確認できます。バーチャルオフィスは、複数の企業が同一住所を使用しているケースが珍しくありません。取引先や顧客が自社の住所を検索して多数の企業が表示された場合、バーチャルオフィスだと知られる可能性があります。
物理的なオフィススペースをもたないバーチャルオフィスは、自社ビルや賃貸オフィスと比べて事業規模や財務基盤が小さいという印象を与え、信用面で劣る場合があります。しかし、バーチャルオフィスの利用が必ずしもマイナスイメージになるわけではありません。企業の実態を明確に示し、信頼関係が構築できれば問題なく取引が進むことがほとんどです。
5-3. 業種によっては許認可を受けられないケースもある
バーチャルオフィスのデメリットとして、業種によっては許認可が取得できない点も挙げられるでしょう。例えば、宅地建物取引業では他事業所と同じ住所を本店とすることが認められていないため、バーチャルオフィスでは許認可がおりません。
また、建設業の場合は本店所在地のオフィスの写真や画像を提出する必要があります。士業ではオフィスの賃貸借契約書の提出が必要なため、物理的なスペースを借りられないバーチャルオフィスでの開業は原則として不可能です。
また、実態のある事業所を重視する金融機関の場合、バーチャルオフィスの利用が融資の審査に影響を与える可能性もあります。
5-4. 場合によっては法人登記が認められないケースもある
バーチャルオフィスを利用して法人登記を行う際、特定の条件や業種によっては法人登記が認められない場合があります。
例えば、登記する住所に同じ名称の法人が既に存在する場合や酷似した名称の法人が存在する場合、登記は認められません。あらかじめ法務省のオンライン登記情報検索サービスなどで調べておくとよいでしょう。
また、下記の業種も登記が認められなかったり、登記できても事業を開始できなかったりします。
これらの業種は、実態のある事業所や特定の要件を満たすオフィススペースが必要となるため、バーチャルオフィスでは基本的な要件を満たせません。法務局や担当省庁のホームページなどで登記や開業に必要な諸条件を確認しておきましょう。
5-5. 他社と住所の重複が発生する可能性がある
バーチャルオフィスでは、一つの物理的な住所を複数の利用者でシェアする形が一般的です。そのため、他社とまったく同じ所在地を登記や名刺、ホームページなどで使うことになります。
他社と住所が同一になるのは珍しいことではなく仕組みとして当然ではありますが、インターネットで会社名や住所を検索した時に、同住所の別企業が多数表示されてしまうケースがあります。
また、問題のある業種や信頼性に欠ける業者が同じ住所を使っているというケースが考えられ、思わぬところでマイナスの印象を与える可能性もあります。さらに深刻なケースでは、過去に犯罪や詐欺に使用された住所と重複してしまうケースも考えられるでしょう。
住所の重複によるリスクを軽減するためには、住所の利用実績や過去の利用企業を事前に調べておくことが有効です。
5-6. 郵便物や宅配物への対応が遅れる可能性がある
バーチャルオフィスでは、郵便物を一度施設で受け取った後、契約者に転送する仕組みが一般的です。そのため、受取から手元に届くまでにはタイムラグが発生します。即日対応が求められる重要な契約書や納期のある書類などは、タイムラグによって業務に支障をきたす恐れがあります。
また、宅配便についても注意が必要です。多くの施設では受け取れる荷物のサイズや重量に制限があり、大型の荷物や長期保管が必要な荷物は追加料金の対象となる場合や、受け取りを断られるケースもあります。緊急性のある書類や大型商品の配送が想定される業種では、事前にサービス内容や保管期限、追加料金の有無を確認しておきましょう。
5-7. 信頼性が低いと見なされる可能性がある
バーチャルオフィスはスタートアップや個人事業主にとってコストパフォーマンスの高い選択肢ですが、業種や利用先によっては「信頼性に欠ける」と判断されてしまうケースがあります。
例えば、法人口座開設の際には、バーチャルオフィスの住所を登記住所とする法人に対し、口座開設を断る、もしくは追加書類の提出を求めるというケースが考えられます。
また、健康保険組合によっては、オフィスの実態が無いことを理由に新規加入を認めない可能性もあるため、注意が必要です。融資を申し込む際にも「仮想オフィス」というだけでマイナスの印象を持たれることがあるため、バーチャルオフィスを利用している理由や普段業務を行っている場所についても説明できるよう準備しておくとよいでしょう。
5-8. オフィスが廃業した場合さまざまな手続きが必要になる
バーチャルオフィスの運営元が廃業した場合、住所を継続して使うことができなくなります。結果として、会社登記の変更手続きや取引先への連絡、名刺やパンフレット、Webサイトなどの表記変更といった煩雑な対応が必要になるでしょう。
さらに、金融機関や官公庁に届け出ている各種書類の変更も発生するため、業務に大きな影響を与える可能性があります。
こうしたリスクを軽減するためには、契約時に運営会社の実績や資本背景、サービス継続性の高い企業かどうかを見極めることが重要です。サービス内容だけで判断せず、事業継続の信頼性という視点からもチェックしておきましょう。
6.バーチャルオフィスの費用相場
ーチャルオフィスの料金は非常に幅広く、提供されるサービス内容によって価格が大きく異なります。ここでは、代表的な価格帯ごとにその特徴を紹介します。
6-1. 月額1,000円以下
バーチャルオフィスの場合、最も安価な価格帯は月額1,000円以下です。500円程度から利用できるバーチャルオフィスもあります。
こうしたプランの多くは、住所の貸し出しと郵便物・宅配物の受け取りに限定されており、転送サービスや法人登記の利用は別途費用がかかるケースが一般的です。中には登記に対応していないプランもあり、あくまでネットショップの公開住所として使いたい場合や、個人のプライバシー保護を目的とした用途に向いています。
非常に安価である反面、提供される機能は必要最低限にとどまるため、自社に必要なサービスを提供しているかどうか、事前に確認しておく必要があるでしょう。
6-2.月額10,000円〜30,000円
月額10,000円から30,000円程度の価格帯になると、法人登記が可能なプランが一般的となり、ビジネスの拠点としても十分に活用できます。郵便物の管理・転送に加えて、会議室や応接スペースの利用が可能な施設も多く、来客対応が必要な場面でも安心です。
ただし、会議室の利用は時間単位で別料金が発生することが多いため、頻繁に利用する予定がある場合はコストの試算が必要です。
また、電話転送や受付サービスなど、事務支援系のオプションも充実している傾向にあり、業務効率化や信頼性の向上にもつながります。
6-3.月額30,000円〜50,000円
上位価格帯のバーチャルオフィスでは、郵便物の無料転送やWeb上での管理機能が備わっているのが一般的です。さらに、常駐スタッフによる受付対応や、複数拠点から選べる住所、充実した会議室設備を備えているケースも多く、より本格的なビジネス環境が整っています。
このクラスの施設になると、利用者の多くが法人登記だけでなく対外的なイメージアップや実務支援を重視する傾向にあります。営業活動や融資、採用活動などで信頼性を高めたい企業にとっては、長期的な視点から見てもコストパフォーマンスの高い選択肢だといえるでしょう。
7. バーチャルオフィスで法人口座は開設できる?

バーチャルオフィスでは法人登記だけでなく、法人口座の開設も可能です。ただし、法人口座開設の可否は銀行によって異なります。銀行は、事業の実態を確認するために以下のような基準で審査を行います。
特に登記簿による会社の存在確認や収入状況の確認が重要です。法律の定めにより、銀行は顧客が反社会勢力との関わりがないかを確認しなければなりません。
(出典:一般社団法人全国銀行協会「反社会的勢力との関係遮断に向けた対応について」)
法人口座をスムーズに開設するためにも、下記の資料を準備しておくとよいでしょう。
これらの資料を準備し、事業内容を明確に説明できるようにしておけば、口座開設の審査を通過しやすくなります。各銀行の基準に合わせて必要な書類をそろえ、健全な事業運営を示すことが重要です。
8.バーチャルオフィスの利用に向いている業種4選

バーチャルオフィスは、コストを抑えつつ事業運営を行いたい企業や個人事業主にとって非常に便利なサービスです。特に向いているのが、自宅を公開せずにビジネスを展開したい事業者や、物理的なオフィススペースを必要としない業種です。
以下では、バーチャルオフィスの利用に適した業種を4つ紹介します。
8-1. ネットショップ関連
ネットショップ関連の業種は、バーチャルオフィスの利用に非常に適しています。
基本的に、自社ECサイトやAmazon・楽天市場といったプラットフォームで商品を販売する業者は、実店舗をもつ必要がありません。しかし、ネットショップには特定商取引法で住所や連絡先の公開が義務づけられています。
ただ、自宅の住所を公開するのはプライバシー保護の観点から避けたいという方も多いでしょう。
バーチャルオフィスなら、自宅の住所を公開せずに済みます。さらに、商品発送や返品の際もバーチャルオフィスの住所を利用すると、プライバシーを保護しながらの商品販売が可能です。商品を自宅や倉庫で保管し、販売業務をオンラインで完結させることで、効率的にビジネスを進められます。
8-2. WEB関連
下記のようなWeb関連の業種も、バーチャルオフィスの利用に適しています。
これらの業種は基本的にパソコンとインターネット環境があれば仕事ができるため、物理的なオフィススペースを必要としません。
バーチャルオフィスを利用することで、ビジネスの拠点として信頼性の高い住所を提供できるため、クライアントや取引先からの信用を得やすくなるでしょう。さらに、郵便物の受取や転送、電話対応などのサービスも利用すれば、業務の効率化も図れます。
683. サービス関連
下記のようなサービス関連の業種も、バーチャルオフィスの利用に向いています。
これらの業種は顧客と対面で会う機会が少なく、主にオンラインや出張でサービスを提供する業種です。そのため、物理的なオフィスを構える必要がありません。
しかし、バーチャルオフィスの住所を名刺やホームページに記載することで、クライアントに安心感を与えられます。住所が一等地であれば、より信頼性は高まるでしょう。
また、会議室や打ち合わせスペースを一時的に利用できるサービスもあり、必要なときにだけ実際のスペースを借りることが可能です。
8-4. 出張ビジネス関連
下記のような出張ビジネス関連の業種も、バーチャルオフィスの利用に適しています。
これらの業種は、クライアントや顧客の指定した場所でサービスを提供するため、固定のオフィススペースをもつ必要がありません。しかし、ビジネスの信頼性を高めるために、公式のビジネス住所をもつのは有効です。
バーチャルオフィスを利用すれば、プロフェッショナルなイメージを保ちつつ、必要なときに会議室や打ち合わせスペースを活用できます。低コストで事業を運営できるため、資本金が少なくても出張ビジネスを始められるでしょう。
9.バーチャルオフィスの選び方・ポイント
バーチャルオフィスは、事業を運営するための重要な拠点となります。運営会社や契約プランによっても企業の信頼性や使い勝手に大きく影響するため、慎重に選ばなければなりません。
バーチャルオフィスを選ぶ際には、次のようなポイントに注目すると良いでしょう。
● サービスの過不足がないか
● サービス内容と料金が見合っているか
● 企業イメージに影響する不安要素がないか
● 実績のある会社が運営しているか
● 利用者からの口コミはどのようなものか
● 受け取り不可の郵便物や宅配物はどのようなものか
● ミーティングスペースやシェアオフィスは併設されているか
● 基本料金に含まれるサービスはどのようなものか
● 解約の条件はどのようなものか
● 有人・無人どちらで運営しているか
それぞれの項目についてなぜ注目する必要があるのか解説します。自社に合うバーチャルオフィス選びの参考にしてください。
9-1. 住所や電話番号に問題がないか
バーチャルオフィスを選ぶ際、まず確認すべきは住所や電話番号です。事業所の住所はビジネスの信用に直結するため、住所に不審な点がないかを確認しましょう。例えば繁華街の雑居ビルや住宅専用の賃貸物件の場合、ビジネスの信頼性に疑問をもたれやすく、取引や融資で不利になりかねません。
また、電話番号が「050」で始まるIP電話の場合も、信用が低く見られるケースがあるため注意が必要です。ビジネス一等地の住所をもつバーチャルオフィスを選ぶことで、信頼性を高めることができます。
9-2. サービスの過不足がないか
バーチャルオフィスの提供するサービスが、自社のニーズに合っているかを確認するのも大切です。基本料金に含まれるサービスはもちろん、オプション料金で提供されるサービスの内容も余さずチェックしましょう。
例えば、取引先や顧客との打ち合わせが多い場合には、貸し会議室やレンタルスペースが利用できるサービスが必要です。郵便物の転送サービスを利用するのであれば、転送方法や頻度、追加料金の有無も確認しなければなりません。
また、不要なサービスがあればコストが無駄になる可能性があるため、必要なサービスだけがそろったプランを選ぶことも重要です。
9-3. サービス内容と料金が見合っているか
バーチャルオフィスのサービス内容と料金が見合っているか、確認することも重要です。初期費用や月額利用料金、オプションサービスの料金を総合的に計算し、予算内で無理なく利用できるかを検討しましょう。
また、長期にわたって利用する場合は、コストパフォーマンスが重要となります。安価なプランは基本的なサービスのみで、追加費用がかかるケースが大半です。しかし、料金が高いからといって必ずしもサービスが充実しているとも限りません。自社のニーズに最適なプランを見つけることが大切です。
9-4. 企業イメージに影響する不安要素がないか
バーチャルオフィスを選ぶ際には、企業イメージに影響する不安要素がないかを確認するのも忘れないようにしましょう。取引先や顧客からの信頼を損なうリスクを回避するためにも、過去に犯罪行為に利用された経歴があるバーチャルオフィスは避けなければなりません。
また、アクセスや建物の外観、内装も重要です。取引先や顧客がオフィスを訪れることがある場合、アクセスがよく清潔感がある建物を選ぶと、企業のイメージアップにつながります。可能であれば、事前に現地を訪れて確認し、信頼性の高いバーチャルオフィスを選びましょう。
9-5. 実績のある会社が運営しているか
バーチャルオフィスを選ぶ際は、提供元の信頼性を見極めることが非常に重要です。中でも運営実績や利用者数、導入企業の規模といった客観的なデータは、その事業者の信頼性を判断する上で有力な材料になります。長年にわたりサービスを提供している会社は、行政や金融機関からの信頼も厚く、法人口座の開設や補助金申請といった場面でもスムーズな対応が期待できるでしょう。
一方で、設立間もない事業者や運営年数が浅いサービスは、急な方針変更や運営停止といったリスクが存在するため注意が必要です。住所が急に使えなくなれば、登記変更や関係各所への連絡など多大な手間が発生します。安心して長期的に利用するためには、運営元の歴史や実績にも目を向け、信頼性のある会社を選ぶことが欠かせません。
9-6. 利用者からの口コミはどのようなものか
公式サイトやパンフレットには書かれていないリアルな使い勝手を知るには、実際の利用者の声が非常に参考になります。特に注目すべきは、郵便物の転送スピードやスタッフの対応品質、トラブル時のサポート体制といった実務に直結する部分です。こうした情報は口コミでしか把握できないケースも多いため、積極的にチェックしておくとよいでしょう。
また、SNSやレビューサイトなどで「対応が遅い」「解約に手間がかかる」といったネガティブな投稿が多い事業者は、信頼性の面で注意が必要です。
口コミをチェックする際には「良い」「悪い」という表面的な評価だけでなく、内容についてもきちんと確認しておくことが重要です。例えば、他社にとっては良くないと感じられるサービスであっても、自社には合う場合もあります。
もちろん一部の意見だけで判断するのは危険ですが、複数の口コミを比較することで傾向が見えてくることもあります。事前に十分な情報収集を行うことで、自社に合うバーチャルオフィスを選びやすくなるでしょう。
9-7. 受け取り不可の郵便物や宅配物はどのようなものか
バーチャルオフィスで提供される郵便物の受取・転送サービスには、受け取り可能な荷物の種類に制限が設けられている場合があります。例えば、現金書留や内容証明、クール便、大型の宅配物などは受け取り対象外としている事業者が少なくありません。これらを無理に送ると受取拒否となる可能性もあり、重要な書類が返送されてしまうおそれがあります。
業種によっては、取引先からの検体、商品サンプル、食品類など特殊な荷物の受け取りが発生するケースもあるため、自社が扱う物品が制限に該当しないか事前に確認しておくことが大切です。また、受取可能な荷物であっても、サイズや保管期間に関して制限がある場合があります。利用前にはサービス詳細や利用規約を丁寧に読み込んでおきましょう。
9-8. ミーティングスペースやシェアオフィスは併設されているか
バーチャルオフィスの中には会議室や作業スペースを併設している施設も存在します。こうしたスペースを活用すれば、クライアントとの対面ミーティングや、外出先での短時間作業に対応できるなど、実務の幅が広がります。また、会議室が併設されていることで、法人登記の信頼性が増す点も魅力です。
ただし、会議室や作業スペースの利用には追加料金が発生するケースが一般的です。中には月額料金に一定時間分の利用料が含まれているプランもあるため、想定される利用頻度に応じてプランを選ぶとよいでしょう。業務スタイルや取引形態に応じて、実際に利用する場面を想定し、必要な設備が揃っているかどうかを見極めることがポイントです。
9-9. 基本料金に含まれるサービスはどのようなものか
バーチャルオフィスの基本料金には、一般的に「住所の貸し出し」「郵便物の受け取り」といった最低限のサービスが含まれています。電話転送や会議室利用、法人登記サポートなど、より実務的な機能については別途オプションとして提供されているケースが多く、料金体系には注意が必要です。
また、郵便物の転送は別料金である場合が多く、都度転送のたびに費用が発生することもあります。契約前には「基本料金に含まれるサービス」と「別途料金が必要なオプション」を明確に区別し、コストを正確に試算しておきましょう。複数のプランがある場合は、自社に必要なサービスを網羅した最適なプランを選ぶことで、無駄な出費を防げます。
9-10. 解約の条件はどのようなものか
バーチャルオフィスは、気軽に始められる反面、解約時に意外な落とし穴があることも珍しくありません。例えば、「解約の1〜2ヶ月前までに通知が必要」という契約条件があった場合、うっかり期日を逃すと翌月分の料金が発生してしまうことになります。また、最低利用期間が定められているプランでは、途中解約に違約金がかかるケースもあるため注意が必要です。
トラブルを避けるためには、契約前に必ず「解約通知の期限」「違約金の有無」「解約後の転送サービスの扱い」などを確認しておくことが重要です。解約条件を見落とすと、想定外のコストや事務処理の手間が発生し、事業運営に悪影響を及ぼすリスクもあるため、細かな点にも目を向けて慎重に判断する必要があります
9-11. 有人・無人どちらで運営しているか
バーチャルオフィスの運営スタイルには、有人型と無人型の2つがあります。有人体制の施設にはスタッフが常駐しているため、郵便物の受け取りや転送処理、来客対応、電話の応対などに柔軟かつ迅速に対応してもらえるのが特徴です。信頼性の高いビジネス環境を求める場合には、有人型の方が安心感があるでしょう。
一方で、無人型は人件費がかからない分、料金を大幅に抑えられるというメリットがあります。ただし、トラブルが発生した際の対応や、緊急時の連絡体制に不安が残ることもあります。事業の性質やリスク許容度に応じて、どちらの運営方式が自社にとって適しているかを見極めることが重要です。
10.【4STEP】バーチャルオフィスの利用開始までの主な流れ

バーチャルオフィスを利用する際は、手続きの全体的な流れを把握しておくことで、スムーズに入居できます。 以下では、利用開始までの流れを4つのステップに分けて解説します。運営会社によっても詳細は異なる場合がありますが、おおよその進行手順に大差はありません。
10-1. STEP1:バーチャルオフィスの検索・内覧申込
まずは、利用するバーチャルオフィスを選びます。インターネットで検索し、希望するエリアや提供されるサービス、料金などを比較しましょう。いくつかの候補が絞られたら、内覧を申し込んで実際のオフィスを見学します。
内覧では、オフィスの住所や設備、周辺環境を確認しましょう。特に会議室や打ち合わせスペースの利用を予定している場合は、部屋の広さや設備をしっかりとチェックすることが重要です。直接現地に行くことで、アクセスのよさや実際に取引先や顧客が訪問しやすい場所であるかも確認できます。
10-2. STEP2:必要書類の準備・提出
内覧で問題がなければ、次に必要書類を準備します。必要書類はバーチャルオフィスの運営会社によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
一般的に必要な書類としては、法人の場合は履歴事項全部証明書や法人の印鑑証明書などが挙げられます。個人事業主の場合は住民票や個人の印鑑証明書、代表者の身分証明書のコピー、自宅の公共料金の明細などです。
書類をそろえたら、指定された方法で提出します。書類の不備がないように確認し、期限内に提出しなければなりません。書類によっては公共機関で直接受け取る必要が生じるため、余裕のあるスケジュールを組みましょう。
10-3. STEP3:入居審査
必要書類を提出した後は、バーチャルオフィスの運営会社による入居審査が行われます。審査で確認されるのは、申込者の信用性や企業の実態、業種などです。特に事業内容が明確であることが重視されるため、必要に応じて事業計画書や取引先との契約書などの追加書類を求められることがあります。
審査には、数日から2週間程度かかるケースが一般的です。審査中に運営会社からの連絡があった場合は、速やかに対応するようにしましょう。審査に通過した場合、契約手続きについての案内が届きます。
10-4. STEP4:契約締結・オフィス利用開始
審査に通過したら、契約締結に進みます。契約書には利用料金や解約条件などが記載されているため、しっかりと内容を確認し、1つでも不明点があれば必ず担当者に問い合わせて疑問を解消しておきましょう。
契約書にサインをしたら、初期費用や月額利用料金を指定された方法で支払います。近年では、クレジットカードでの支払いが一般的です。運営会社によっては銀行口座からの引き落としや、振込にも対応している場合があります。支払いが完了すれば、いよいよバーチャルオフィスの利用開始です。
以上の4ステップを踏むことで、スムーズにバーチャルオフィスの利用を開始できます。事前に必要な手続きや準備を把握し、計画的に進めるとよいでしょう。
11.バーチャルオフィスで登記をする際の流れ
バーチャルオフィスを利用して会社を設立する場合、通常の法人登記と比べていくつか注意すべきポイントがあります。手続き自体は一般的な設立方法と同様ですが、バーチャルオフィスならではの契約手順や必要な書類、確認事項が存在します。ここでは、バーチャルオフィスで法人登記を行う際の具体的な流れを、ステップごとにわかりやすく解説します。
11-1. バーチャルオフィスを契約する
法人登記を行うには、本店所在地を明確に定める必要があります。そのため、まずはバーチャルオフィスの契約を済ませておきましょう。複数の事業者が提供するバーチャルオフィスの中から、自社の業種や事業スタイルに合った住所・サービス内容を比較検討し、最適なプランを選ぶことが重要です。
契約時には、本人確認書類や法人設立の目的がわかる書類などの提出が求められる場合があります。事前に準備しておくと、スムーズに契約を進められるでしょう。
また、利用規約や禁止業種などの条件を事前に確認し、料金体系やサービス内容に納得したうえで契約を締結してください。契約が完了すると、利用開始日や住所利用の詳細、郵便物の転送方法などが案内され、登記に必要な「本店所在地の住所」が正式に確保されます。
11-2. 設立する会社の基本情報を取りまとめ定款を作成する
会社設立の準備段階では、まず会社の根幹となる基本情報を整理することが欠かせません。会社名や事業目的、本店所在地、資本金、発起人の氏名や住所など、登記時に必要となる情報を網羅的に準備し、それらをもとに定款を作成します。定款は、会社の組織や運営ルールを定める重要な書類です。将来的なトラブルを防ぐうえでも丁寧に作成しましょう。
バーチャルオフィスを本店所在地とする場合には、定款にもその住所を正確に記載する必要があります。住所に誤りがあると、後の手続きが無効になる場合や法務局で差し戻される可能性もあるため、表記方法に十分注意しましょう。
11-3. 会社実印を作成する
法人登記においては、会社の実印(代表印)を作成することが必須です。代表印は登記時に法務局に届け出る印鑑であり、今後、各種契約書類や役所への申請書に使用します。あわせて、法人口座用の銀行印や請求書などの書類に使われることが多い角印も作成しておくと、二度手間にならずスムーズに各種手続きを進められるでしょう。
実印には法律上のサイズや形状の規定があるため、印鑑業者の指示に従って正しい形式で作成することが重要です。デザインは自由度がありますが、会社のブランドイメージに合った印影を選ぶことで、ビジネスの信頼性向上にもつながります。印鑑を作成したら、保管方法にも注意し、紛失や盗難を防ぐ対策を講じましょう。
11-4. 定款の認証を受ける
株式会社を設立する場合には、作成した定款を公証人役場で認証してもらう必要があります。定款の認証が必要なのは株式会社の場合のみで、合同会社の場合は必要ありません。認証の際には、定款の内容を確認のうえ、電子定款または紙の定款を提出します。
電子定款を利用すれば印紙税(通常は4万円)が不要になるため、コストを抑えたい場合には便利です。ただし、電子認証には専用ソフトや電子証明書が必要なため、手続きを代行してもらう事業者を利用するケースも多く見られます。印紙税を支払う場合と比較し、手間やコストが抑えられる方を選びましょう。
定款の内容に不備があると認証が受けられず、登記手続き全体が遅れてしまうため、事前の確認を徹底してください。
11-5. 資本金の払い込みを行う
定款の認証が完了したら、次に資本金の払い込みを行いましょう。設立時の資本金は、発起人(会社を設立する個人)の名義で開設された銀行口座に一括で振り込みます。これは会社の資金力を証明するための手続きであり、後に登記申請の際にその証明書類を提出する必要があります。
払い込みの証明には、通帳の表紙、使用者の氏名が記載されたページ、そして実際に資本金が振り込まれた記録ページをコピーし、これを提出書類として利用してください。将来的に法人口座を開設する際にもこの資料が必要になるため、きちんと保管しておくことが大切です。
11-6. 法人登記に必要な書類を作成し登記申請する
最後に、法務局への登記申請を行います。この段階では、必要書類を一式揃えて所轄の法務局に提出します。提出する書類には、登記申請書をはじめ、公証人が認証した定款、発起人の同意書、印鑑届書、資本金の払い込みを証明する書類などが含まれます。どれか一つでも不備があると受理されないため、細部までしっかり確認しましょう。
登記が完了すると、会社の「法人番号」が付与され、正式に法人としての活動を開始できるようになります。法人番号は、税務署への申告や法人口座の開設、社会保険の手続きなどでも使用する重要な情報です。登記の手続きが済むと、登記事項証明書や印鑑証明書の取得も可能となります。
まとめ
バーチャルオフィスは、実際にオフィスをもたずに事業用の住所をレンタルできるサービスです。メリットとして、低コストで一等地の住所を利用でき、自宅住所を公開する必要がない点が挙げられます。一方で、運営会社によっては作業スペースを借りられない、ほかの契約者も同じ住所を利用するなどのデメリットもあります。バーチャルオフィスを利用する際は、デメリットの解消方法も考えておくことが大切です。バーチャルオフィスを上手に活用し、効率のよい事業展開を図りましょう。
クロスコープが提供するレンタルオフィスは、都内8拠点と仙台に合計9拠点を展開している法人向けレンタルオフィスです。バーチャルオフィスプランもご用意がございます。
バーチャルオフィスから事業を始め、スタートアップを経て規模に応じて個室に切り替得ることも可能です。落ち着いた大人の街「港区外苑前の青山エリア」、高層ビルが立ち並ぶビジネスの中心地「新宿区の新宿エリア」、国際色豊かな「港区六本木エリア」、再開発著しいアクセス抜群の「渋谷区の渋谷エリア」、東北随一の街「仙台市青葉区の仙台エリア」。最小限のコストで青山・新宿・六本木・渋谷・仙台などの一等地の住所を利用し、あなたの会社の信用力やブランドイメージを高めることができます。
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