2026年1月27日

税理士として独立開業を目指す際、できるだけコストを抑えたいと考えるのは自然なことです。その選択肢の一つとして、バーチャルオフィスの利用を検討している方もいるのではないでしょうか。
しかし結論から言うと、税理士法が定める事務所の要件を満たさないため、税理士はバーチャルオフィスだけでは開業できません。バーチャルオフィスでの開業を検討している場合には、別の手段を検討する必要があります。とはいえ、バーチャルオフィスを完全に排除する必要はなく、実際の事務所と組み合わせることで、コスト削減やプライバシー保護といったメリットを得ることは可能です。
この記事では、なぜバーチャルオフィスだけでは開業できないのか、どのような事務所形態なら認められるのか、そしてバーチャルオフィスをどう活用すれば良いのかを詳しく解説します。これから税理士として独立を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
1. バーチャルオフィスで税理士は開業できない
2.税理士がバーチャルオフィスで開業できない理由
3.税理士が事務所として利用できるオフィスの例
4.税理士がバーチャルオフィスを活用するパターン
5.税理士がバーチャルオフィスを利用するメリット
6.まとめ
1. バーチャルオフィスで税理士は開業できない
税理士として独立を考えたとき、バーチャルオフィスの利用を検討する方もいるでしょう。バーチャルオフィスとは、実際のオフィススペースを持たず、住所のみを借りられるサービスのことです。
しかし結論から言うと、税理士はバーチャルオフィスだけでは開業できません。税理士法が定める事務所の要件を満たさないためです。バーチャルオフィスでの開業を検討している場合には、別の方法を探さなければなりません。
2. 税理士がバーチャルオフィスで開業できない理由
税理士がバーチャルオフィスで開業できない背景には、法律上の要件や業務の特性、そして税理士会の審査基準があります。ここでは、バーチャルオフィスが税理士事務所として認められない具体的な理由を3つの観点から見ていきましょう。
2-1. 税理士法が求める「事務所の実態」を満たさないため
税理士法第40条では、税理士は事務所を設ける義務が定められています。この「事務所」とは、単なる住所ではなく、実際に業務を行う本拠地を指します。バーチャルオフィスは住所の貸与のみを行うサービスであり、執務の実態がありません。そのため、法律が求める事務所の要件を満たさないのです。
税理士会の登録審査では、実際に業務を行える環境があるかどうかが厳しく確認されます。単に住所があるだけでは不十分で、そこで継続的に業務を行っている実態が必要です。バーチャルオフィスでは、契約者が自由に出入りできる専有スペースがなく、常駐して業務を行うこともできません。
このように、法律が想定する「事務所」の概念とバーチャルオフィスの実態には大きな乖離があります。税理士として適切に業務を行うためには、法的要件を満たした事務所を構える必要があるのです。
2-2. 税理士業務で求められる管理権限を持てないため
税理士は顧客の重要な財務情報を扱うため、高度な情報管理が求められます。バーチャルオフィスでは、自由に出入りできる専有スペースがなく、書類を安全に保管する場所も確保できません。また、税理士には守秘義務があり、顧客情報を適切に管理する責任があります。しかし、バーチャルオフィスでは施錠できる専有空間がないため、この義務を果たすことが困難です。
さらに、税理士業務では帳簿書類の保管義務も発生します。顧客から預かった資料や作成した申告書類などを、安全に管理できる環境が必要です。バーチャルオフィスでは郵便物の受け取りサービスはあっても、大量の書類を長期保管する設備はありません。
また、業務に必要なパソコンや専門ソフトウェア、プリンターなどの設備を常設することもできません。税理士業務を適切に遂行するには、これらの管理権限を完全に持てる環境が不可欠です。バーチャルオフィスの構造上、こうした要件を満たすことはできません。
2-3. 税理士会の登録審査で本拠性を示せないため
税理士として開業するには、所属する税理士会への登録が必要です。登録審査では、事務所の写真や賃貸借契約書などの提出が求められます。バーチャルオフィスの場合、実際の執務スペースがないため、これらの書類を用意できません。また、固定電話や執務用の机、書類保管設備といった業務実態を証明することも困難です。
税理士会の審査では、事務所が「業務の本拠」として機能しているかが重要な判断基準となります。具体的には、執務に使用している机や椅子の写真、書類保管用のキャビネット、固定電話の設置状況などが確認されます。
さらに、賃貸契約書では事務所使用が可能であることが明記されていなければなりません。バーチャルオフィスの契約書は「住所利用」のみを認めるものが多く、実際の執務を行う権利を保証していません。形式的な住所だけでは「業務の本拠」に該当しないと判断され、登録が認められない可能性が高いでしょう。審査を確実に通過するためには、実態のある事務所を構えることが必須です。
3. 税理士が事務所として利用できるオフィスの例
バーチャルオフィスが使えないとなると、どのような場所を事務所として選べば良いのでしょうか。税理士会に登録できる事務所には、いくつかの選択肢があります。それぞれの特徴やメリット、注意点を理解した上で、自分の状況に合った形態を選びましょう。
3-1. 自宅
自宅を事務所として利用することは、税理士法上認められています。本人が自由に管理でき、出入りや書類管理が可能なためです。ただし、執務スペースとして机やパソコン、書類保管場所を常設しておく必要があります。また、守秘義務を守るため、家族の立ち入りを制限できる環境を整えましょう。来客対応ができる体制も求められます。
一方で、マンションの管理規約や賃貸契約で事務所利用が禁止されている場合は利用できません。特に分譲マンションでは、住居専用との規約が設けられていることが多いため注意が必要です。賃貸物件の場合も、契約前に必ず大家さんや管理会社に確認してください。事務所利用が可能であることを書面で確認しておくと安心です。
自宅を事務所にする最大のメリットはコストの低さです。新たに賃料を支払う必要がなく、すぐに業務を開始できる点も魅力でしょう。通勤時間もかからないため、時間を有効活用できます。ただし、住所を公開することでプライバシーの問題が生じる可能性があります。自宅の住所が名刺やホームページに掲載されることで、家族の安全面でも不安を感じる方もいるでしょう。こうした課題に対しては、バーチャルオフィスとの併用が有効な対策となります。
3-2. 賃貸オフィス
専有スペースが確保できる賃貸オフィスは、税理士事務所として最も確実な選択肢です。契約書が使用権限の証明になるため、税理士会の審査でも有利に働きます。施錠可能な空間や書類保管スペース、固定電話やインターネット環境を整えやすい点もメリットです。さらに、来訪者対応ができる動線を確保できるため、顧客との面談もスムーズに行えます。
賃貸オフィスを選ぶ際には、立地や広さ、設備などを総合的に判断しましょう。駅からのアクセスが良い物件であれば、顧客の来訪にも便利です。また、オフィスビル内であれば、会議室などの共用設備が利用できる場合もあります。セキュリティ面でも、オートロックや管理人常駐のビルなら安心です。
一方で、敷金や礼金などの初期費用が大きくなりがちです。一般的には家賃の6ヶ月分程度の初期費用が必要になることもあります。毎月の固定費も考慮する必要があり、開業初期で資金繰りに不安がある場合は慎重に検討してください。小規模なオフィスを借りて、必要に応じて外部の会議室を利用する方法も現実的な選択肢です。初期投資を抑えつつ、事務所としての要件を満たすことができます。
3-3. レンタルオフィス
レンタルオフィスは、賃貸オフィスと比べて初期費用を抑えられる選択肢です。施錠できる個室があれば、管理権限を確保できます。郵便受付や会議室、共有設備が利用できる点も便利でしょう。都心部でも月額負担を抑えやすいため、開業初期の税理士にとって現実的な選択肢となります。
レンタルオフィスの大きな特徴は、必要な設備がすでに整っていることです。インターネット回線や複合機、応接スペースなどが共用設備として用意されており、初期投資を大幅に削減できます。また、受付サービスや電話応対サービスを提供している施設も多く、少人数での運営をサポートしてくれます。契約期間も柔軟で、短期契約が可能な場合もあるため、事業の成長に合わせて規模を変更しやすいのも利点です。
ただし、レンタルオフィスを選ぶ際には、個室があるかどうかを必ず確認してください。共有スペースのみの場合は、税理士会の審査で認められない可能性があります。また、施設によっては利用時間に制限がある場合もあるため、自分の業務スタイルに合っているか確認しましょう。契約内容をよく確認し、税理士業務に必要な環境が整っているかを見極めることが大切です。実際に見学して、業務に支障がないか確かめてから契約することをおすすめします。
4. 税理士がバーチャルオフィスを活用するパターン
バーチャルオフィス単体では税理士事務所として登録できませんが、実際の事務所と組み合わせることで有効に活用できます。ここでは、税理士がバーチャルオフィスを戦略的に利用する3つのパターンを紹介します。
4-1. 自宅兼事務所とバーチャルオフィスの併用
税理士会には自宅を事務所として登録し、名刺やホームページにはバーチャルオフィスの住所を記載する方法があります。この方法なら、法的要件を満たしつつ、自宅の住所を公開せずに済みます。実際の業務は自宅で行い、対外的にはバーチャルオフィスの住所を使うことで、コストとプライバシーの両方を守れるでしょう。
この方法を採用する際には、税理士会への登録書類に自宅の住所を正確に記載してください。登録後は、名刺やホームページ、パンフレットなどの営業ツールにバーチャルオフィスの住所を使用します。顧客からの郵便物はバーチャルオフィスで受け取り、転送サービスを利用して自宅に届けてもらうことも可能です。
ただし、税理士会への登録は必ず自宅で行ってください。バーチャルオフィスの住所で登録しようとすると、審査で却下される可能性が高くなります。また、顧客との面談が必要な場合は、自宅に招くか、外部の会議室を利用することになります。自宅で面談を行う場合は、プライベート空間と明確に区切られた応接スペースを用意しておくと良いでしょう。バーチャルオフィスの住所は、あくまで対外的な公開用として活用することが重要です。
4-2. レンタルオフィスとバーチャルオフィスの併用
実際に業務を行う場所としてレンタルオフィスを税理士会に登録し、名刺やホームページにはバーチャルオフィスの住所を記載する方法もあります。たとえば、地方でレンタルオフィスを借りて業務を行いつつ、都心の住所を対外的に使うことも可能です。この方法なら、営業エリアを拡大したいときにも効果的です。
実際の業務は生活コストの低い地方都市のレンタルオフィスで行い、名刺やホームページには東京や大阪などの都心部のバーチャルオフィス住所を記載します。こうすることで、都心の顧客にもアプローチしやすくなります。顧客は住所を見て依頼先を選ぶことも多いため、イメージ戦略として有効です。
また、複数のエリアで営業活動を行いたい場合にも活用できます。たとえば、関東と関西の両方で顧客を開拓したい場合、それぞれのエリアにバーチャルオフィスを借りることで、地域密着型の事務所という印象を与えられます。オンラインでの打ち合わせが一般的になった現在では、物理的な距離はさほど問題になりません。
ただし、実際の業務拠点と公開する住所が異なる点について、顧客に説明が必要になる場合もあります。初回の面談時などに、業務体制について丁寧に説明しておくと信頼関係を築きやすくなるでしょう。透明性を保ちながら、戦略的に住所を使い分けることが大切です。
5. 税理士がバーチャルオフィスを利用するメリット
実際の事務所と併用する形でバーチャルオフィスを活用すると、さまざまなメリットが得られます。特にコスト面、プライバシー面、ブランディング面での利点は大きいでしょう。ここでは、税理士がバーチャルオフィスを利用する具体的なメリットを3つの視点から解説します。
5-1. 事務所コストを削減できる
賃貸事務所を借りると、敷金や礼金、毎月の家賃など初期費用が多くかかります。一方、自宅を事務所として税理士会に登録し、バーチャルオフィスで公開用の住所を借りる形であれば、事務所コストを大幅に抑えられるでしょう。特に開業初期は売上が安定しないため、固定費を軽くしておくことが経営の安定につながります。
バーチャルオフィスの月額料金は、サービス内容にもよりますが数千円から1万円程度で利用できるものが多くあります。賃貸事務所の家賃が月額10万円以上かかることを考えると、大幅なコスト削減です。削減できた資金は、営業活動や広告宣伝費、業務システムの導入など、事業成長に必要な投資に回せます。
また、賃貸事務所では家賃以外にも、水道光熱費や通信費、清掃費などの維持費がかかります。自宅を事務所にすれば、これらの費用も家庭用と兼用できるため、さらに経費を抑えられるのです。開業から軌道に乗るまでの期間は、できるだけキャッシュフローに余裕を持たせることが重要です。バーチャルオフィスの活用は、その有効な手段の一つと言えるでしょう。
5-2. プライバシーを守れる
自宅を事務所にしている場合、名刺やホームページで住所を公開することにはリスクが伴います。特に、顧客とのトラブルが起きた場合や、インターネット上で情報が拡散された場合のリスクは無視できません。バーチャルオフィスを利用すれば、自宅の住所を必要以上に公開せずに済みます。
実際に、自宅の住所が公開されることで、予期せぬ訪問を受けたり、深夜に電話がかかってきたりするケースもあります。また、インターネット上で住所が検索可能な状態になると、ストリートビューなどで外観まで確認できてしまうため、家族と同居している場合は家族の安全やプライバシーも考慮する必要があるでしょう。
バーチャルオフィスの住所を公開用として使えば、こうしたリスクを回避できます。万が一、顧客とトラブルになった場合でも、自宅が特定される可能性が軽減されます。また、自宅と仕事の境界を明確にすることで、精神的な負担も軽減されます。プライベートな時間と業務時間をしっかり区別でき、ワークライフバランスを保ちやすくなるでしょう。税理士は信頼が重要な職業ですが、同時に自身の安全も守る必要があります。
5-3. 一等地の住所を利用することでブランドイメージを向上できる
事務所の住所は、税理士のブランドイメージに大きく影響します。地方在住であっても、都心の一等地の住所を記載しておくことで、都心部の顧客から依頼を受けやすくなる場合もあるでしょう。創業間もない時期は特に信頼が少ない状態のため、イメージ向上を心がけなければなりません。
たとえば、東京であれば千代田区や港区、大阪であれば中央区や北区といった一等地の住所は、それだけで信頼感を与えます。顧客は税理士を選ぶ際、実績や専門性だけでなく、事務所の所在地も判断材料にすることがあります。特に、企業が税理士を選定する場合、取引先としての体裁を気にするケースも少なくありません。
バーチャルオフィスを活用すれば、実際の事務所は地方の低コストな場所に置きつつ、営業活動では都心の住所を使うことが可能です。これにより、コストを抑えながらブランドイメージを高められます。オンラインでのやり取りが主流になった現在では、実際の事務所の場所よりも、対外的な印象が重要になっています。
5-4. 便利なオプションサービスを利用できる
バーチャルオフィスには、電話受付代行や郵便物のデジタル化といったオプションサービスを提供しているところもあります。これらのサービスを活用すれば、業務効率が向上する場合もあるでしょう。また、会議室やコワーキングスペースを併設しているバーチャルオフィスであれば、必要に応じて利用できます。
電話受付代行サービスを利用すれば、外出中や業務に集中している時でも電話対応を任せられます。受付スタッフが事務所名で電話に出てくれるため、小規模事務所でもしっかりした体制があると印象づけられるでしょう。また、郵便物のデジタル化サービスでは、届いた郵便物をスキャンしてメールで送ってもらえます。これにより、郵便物の確認のためだけに事務所に行く手間が省けます。
会議室サービスは、顧客との面談時に特に便利です。自宅を事務所にしている場合、顧客を招き入れることに抵抗がある方もいるでしょう。バーチャルオフィスの会議室を利用すれば、プロフェッショナルな環境で打ち合わせができます。多くの施設では、時間単位でのレンタルが可能なため、必要な時だけ利用してコストを抑えられます。
6. まとめ
税理士はバーチャルオフィスだけでは開業できません。税理士法が求める事務所の実態を満たさず、税理士会の登録審査も通らないためです。事務所として認められるには、自宅や賃貸オフィス、レンタルオフィスなど、実際に業務を行える場所を確保する必要があります。
一方で、バーチャルオフィスを併用することで、コスト削減やプライバシー保護、ブランドイメージ向上といったメリットを得ることは可能です。自宅やレンタルオフィスを税理士会に登録し、対外的にはバーチャルオフィスの住所を使う方法を検討してみてください。
ただし、バーチャルオフィスの利用可否については、各税理士会によって見解が異なる場合もあります。実際に使用する際には、契約前に専門家に相談しましょう。
クロスコープでは全国9拠点で利用できるバーチャルオフィスを展開しております。いずれも一等地の住所を利用できるため、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
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