アナログな「感性」と最新テクノロジーで創る、新しいカルチャー
株式会社フラックス
廣瀬様
・ご利用拠点:クロスコープ渋谷
・入会時期:2025年9月~
― これまでのご経歴と、現在の事業につながる創業のきっかけを教えてください。
(廣瀬様)大学卒業後は大日本印刷の市谷事業部で小学館を担当し、約10年間、印刷側として雑誌づくりに携わってきました。そのうち「作る側」に関わりたい思いが強くなり、グラフィックデザイナーを志して独立し、デザイン会社を立ち上げました。広告やエディトリアル、JICA関連の国際協力など様々な案件を経験する中で、「デザイン業だけで一生食べていくのは難しい」と感じ、デザインの力を活かして自分で“売れるもの”をつくる必要性を意識したことが、出版や現在の事業に踏み出すきっかけになりました。

― ダンスカルチャー誌や五つのカルチャーをテーマにした取り組みについて教えてください。
(廣瀬様)デザインの先に「自分で売るもの」を持とうと考えたとき、選んだのがダンスや音楽、ファッションなどを扱うカルチャー誌でした。ダンスファッション、ダンスアート、ダンスエンターテイメント、ダンススポーツ、ダンスミュージックといった要素を盛り込んだ雑誌を創刊し、家系館でのスタートから月刊誌として全国販売するまで育てました。そこで得た音楽・ファッション・アート・エンタメの知識や人脈を基盤に、「情報」だったものを「コンテンツ化」したいと考え、五つのカルチャーを総合したダンスプログラムづくりへと展開していきました。
― カルチャー誌からフィットネスプログラム、シアター運営へと展開していった流れを教えてください。
(廣瀬様)雑誌で培った人脈やノウハウを活かし、音楽・ファッション・エンタメ・スポーツなど五つのカルチャーを一つにまとめた総合的なダンスフィットネスプログラムを開発しました。それをフィットネスクラブにプレゼンしたところ、ティップネスで採用され、業界内でファンを増やしていきました。やがてイベントの拠点が必要になり、約10年前にシアターをつくり、公演やライブ、イベントを開催。さらにイタリアのダンス発祥のファッションブランド「FREDDY」とも意気投合し、ファッション・自社制作音楽・プログラムを組み合わせた公演など、多角的に展開してきました。

― コロナ禍がビジネスやフィットネス業界にもたらした影響と、直販モデルへの転換について教えてください。
(廣瀬様)これまではフィットネスクラブが集めた会員様に対して、当社がコンテンツ提供を行うモデルで、クラブとインストラクターに支えられてきました。しかしコロナ禍でクラブは大打撃を受け、いわゆる“幽霊会員”が一気に退会し、収益性が大きく落ち込みました。高齢化も進み、右肩上がりとは言えない状況を強く感じました。そこで「クラブ頼み」から転換し、自社で直接お客様にアプローチする必要があると判断しました。これまでのコンテンツを武器に、SNSを活用してダイレクトに届ける方向へ舵を切り、海外も視野に準備を進めているところです。
― 出版テーマとしてダンスカルチャーやアナログな「感性」を選ばれた理由を教えてください。
(廣瀬様)出版に進む際、「デザインを活かしつつ、何を売るか」を考えたとき、行き着いたのがダンスや音楽などのカルチャーでした。当時、仕事で使っていたMacが年々高性能化し、「性能競争」だけが続くことに違和感を覚えました。人間の手のスピードを超えても、いつか欲しくなくなる日が来るのではないか、技術だけでは満たされない領域があるのではないかと感じたのです。そこで、性能ではなく「心」や「感動」に訴えるアナログな価値、五つのカルチャーの魅力を雑誌として掘り下げ、伝統や歴史をふまえた一過性ではないカルチャーを扱う媒体をつくろうと考えました。
― 新しいコンテンツを生み出すときの発想や、意識されている“コツ”のようなものはありますか?
(廣瀬様)コンテンツづくりの発想はとてもシンプルで、「みんなが喜びそうか」「感動してくれそうか」を軸に考えています。自分自身もそういった表現が好きなので、自分が「いい」と思えるものをしっかり噛み砕き、わかりやすい形で世の中に出していけば人にも伝わるはず、という感覚があります。特別なひらめきというより、これまで積み上げてきたものの“続き”として、少し改良したり、何かを足したりしながら形にしていくイメージです。その積み重ねで、これまで様々なコンテンツを世に出してきました。
― これまでで「苦労した」「チャレンジングだった」と感じた場面について教えてください。
(廣瀬様)一番大変だったのは、やはりコロナ禍を含む経済的な打撃を受けた局面です。会社である以上、他社との関係値があり、社会全体が相互に影響し合う中で価値観の違いも生まれます。自分には「一過性のものはやりたくない」「数字合わせだけの発想は好まない」という譲れない軸があり、その違いから意見が合わず、組んでいた相手から外されるようなこともありました。その都度ダメージはありましたが、大きく縮小した時期を経て、今はミニマムな体制の中で人にも恵まれ、少しずつ前に進めている感覚があります。
― 現在取り組んでいるメインのサービスや、その対象となるお客様について教えてください。
(廣瀬様)まだスタートしたばかりでこれから広げていく段階ですが、「健康になってほしい」「それを楽しく続けてほしい」という思いで、音楽を中心にトレーニングと結びつけることを大切にしています。自分の気分が上がるファッションを身につけ、継続のきっかけとなるエンターテインメントのイベントがあり、そこに人と人のコミュニケーションが生まれることが理想です。その流れを導く人材を育成し、AIやSNSといった今の技術も活用しながら、健康とカルチャーがつながる場を広げていきたいと考えています。

― 生成AIなどのテクノロジーとの付き合い方や、業界の今後の変化についてどのように見ていますか?
(廣瀬様)生成AIについては、今ほとんどの仕事で触れており、重要な存在になりつつあると感じています。一方でAIには感性がなく、そこが抜けた回答も多いと感じるため、冷静かつ客観的に、バランスを取りながら使うことを意識しています。スマホやAIに依存した先で、人が何かに気づくタイミングがいずれ来るのではないか、とも考えています。しばらくはAI自体の面白さで盛り上がる時代が続くと思いますが、最終的には感性とテクノロジーをうまく両立させる人が重要になるのではないかと見ています。
― お仕事の中で「やりがい」を感じる瞬間はどんなときですか?
(廣瀬様)一番のやりがいは、やはりお客様に喜ばれたり、褒められたりしたときです。企画やコンテンツづくりには大変な部分も多いですが、「良かった」「楽しかった」といった声をいただけると、それまでの苦労が報われますし、次のチャレンジに向かうエネルギーにもなります。五つのカルチャーを絡めた表現やイベントなど、自分たちらしい取り組みを評価してもらえた瞬間に、仕事を続けてきて良かったと感じます。
― 現在の働き方やメンバー構成、採用の考え方について教えてください。
(廣瀬様)今のメンバーは、比較的似た価値観を持った人が集まっており、目標も近いので細かく指示を出す必要はあまりありません。「働きやすさ」というより「働きたい人が働く」という感覚に近く、趣味が近い部分も多いと感じています。一方で、事業にはハードルも多く、それを自分で積み上げて乗り越えることを楽しめる人でないと続きません。そのため理想的な人材は多くはないと感じており、現在は副業的に、週1回でも表現にトライしたい人を募るなど、柔軟な形でチャレンジしたい人を集めたいと考えています。「人が喜んでいることに興味がある人」が向いているのではないかと思っています。
― クロスコープ渋谷を選ばれた理由と、入居後に感じているメリットを教えてください。
(廣瀬様)最初に感じたのは「こんなしっかりしたビルに、これだけ手軽に入れるのか」という驚きでした。以前勤めていた大手企業を思い出すようなスケール感があり、その環境にスッと入居できたことに感動しました。実際に利用してみると、仕事がしやすいスペースで、打ち合わせの場所もあり、対外的にも信用を得られる点が大きなメリットだと感じています。自前で会議室をつくると空き時間やコストの問題が出ますが、ここではブースや会議室を必要なときに活用でき、使い勝手の良さを実感しています。
― レンタルオフィスを検討されている方へ、クロスコープの活用についてメッセージをお願いします。
(廣瀬様)ここは良い意味で「レンタルオフィスっぽくない」と感じています。一般的なレンタルオフィスが“スペース貸し”“アパート”的に感じられることがある一方で、ここは大企業の事業部として入っているような印象があり、スケール感があります。その分、対外的な見え方も良く、自社の事業の一部として自然に溶け込ませることができます。私自身、他のレンタルオフィスも利用した経験がありますが、クロスコープはそれらとまったく違うと感じており、「しっかりした環境で事業を進めたい方」に特に向いているのではないかと思います。
株式会社フラックス
株式会社フラックス廣瀬様のお話から、印刷・デザイン・出版を起点に、ダンスや音楽、ファッションなど五つのカルチャーをつなぎ合わせながら独自のコンテンツを生み出してこられた歩みが伝わってきました。コロナ禍で従来モデルが大きな影響を受ける中でも、自社で直接お客様に届く形へと発想を切り替え、SNSやAIといった新しいテクノロジーも柔軟に取り入れながら、アナログな「感性」の価値を改めて問い直している姿勢が印象的でした。クロスコープとしても、渋谷の環境が、今後のコンテンツ発信や海外展開に向けた準備の拠点としてお役に立てれば幸いです。これからも、五つのカルチャーを軸にした新たな表現とチャレンジを心より応援しています。
https://www.ddd-dance.com/company/