昼食会(2010年1月13日)

2010年2月16日

CROSS COOP青山 昼食会 2010年1月13日(水) 11:00~13:00

今回のテーマ: 「IPOって今、どうなんだろう?」
司会:未来予想株式会社 庄子 素史、大内 昭典
庄子:
本日は宜しくお願い致します。まずは、最近のIPO(新規株式公開)の状況などについて、大内からお話をさせて頂きます。大内くん、よろしく!
IPO市場環境、VC投資環境、最近のIPO事例について
大内:
お手元の資料をご覧下さい。 (※ 資料を見ながら) 最近では、IPOを目指している方は「果たして上場すべきなのか?上場のメリットはあるのか?」お悩みの方も多いようです。
近年、IPOが活発に行われていた2004年~2007年では、好調な株式市場と成長期待により、上場時の公募価格が高く、十分な資金調達ができていたのですが、リーマンショック以降、輸出依存型の日本企業の急速な業績の悪化、円高及び大企業の度重なる大型増資により、株式市場全体が停滞し、上場企業は市場から十分に資金調達ができず、時価総額も低迷しています。

2009年のIPOを振り返って見ますと、上場企業は19社と1978年以来、31年ぶりの低水準でした。
2009年の特徴は、景気の影響を受けにくい、安定性と成長性を兼ね備えた会社が上場し、高い株価を付ける傾向にありました。例を挙げると、クックパッド、大幸薬品、三菱総合研究所などです。
2006年1月のライブドアショック以降、低迷を続けてきた新興市場は、業績の回復期待により、2009年3月頃を底に、回復傾向にあります。したがって、2010年のIPOは2009年よりも増加することが予想されています。
リーマンショック以降、IPO件数が特に大きく減っています。とはいえ、新興市場は回復の兆しが見えてきており、徐々にIPOの件数も増えそうです。日本では今年から回復してくるように思えます。一方、海外に目を向けると中国の株式市場が活況で、2010年は約140社が上場する見通しがあります。

日本の投資マネーは、日本市場をスルーして、急速に中国を始めとした新興国市場に流れています。
最近、VC(ベンチャーキャピタル:投資事業有限責任組合)が投資している企業のキーワードを挙げると、行動ターゲティング、アドネットワーク、モバイル、動画及びCtoCビジネスなど、ソーシャルメディアの流行に乗った企業に投資している傾向にあります。

2007~08年に上場した企業で、VCから出資を受けた企業の上場前財務、資本政策の平均値を見ますと、VC参加数は2~4社、VC比率は約10%、社長の持分比率は約30%、上場前期の売上高は約40~50億円、純利益約2~3億円、初値PERは20倍前後、初値時価総額は約50億円、資金調達額は2~3億円という結果が出ています。

上場の大きな魅力のひとつは、市場から(返却しなくてもよい)資金を調達できることにありますので、最近の数値を見ると少し物足りなさを感じますね。

庄子:
はい、ありがとうございます。
少し補足しますと、「新興市場のPERが低い、すなわち株価がつかない」という環境のなか、投資家が出口戦略が見えないため、「新規の投資をしなくなる」という悪循環が生じてきて、まさに「ニワトリとたまご」になってしまっています。
2004年以降、ジャフコ、大和SMBCなど 数百億円を超えるファンドが組成されてきました。VCも投資家と同じくらい苦しい状況です。彼らは投資をすることが仕事なのですから、IPOが確実な銘柄を、キャピタリストは血眼で捜している状況です。

一方で、スタートアップの会社さんを長期的に支援している独立系のVC会社も増えてきました。「今は投資家を見極める時代」だと思います。資金調達をしたい!と考えたときに、投資会社のキャピタリストで入社から5年くらいになっている中堅キャピタリストであれば、専門特化していればそれなりのネットワークを持っています。

これだけマーケットが悪い中、投資委員会を通して資金調達をするためには、そのパートナーとなる投資会社のキャピタリストを選ぶ眼を養わなければなりません。「引き続き、投資検討しています」と言いながら、態度保留するキャピタリストも多いですが、そういう行為に過度の期待を抱いて振り回されないで欲しいと思います。

Air株式会社 柏木さん:
3~4年後にIPOしたいなあと考えています。数社からお声がかかったのですが、VCさんには会社の紹介や人脈を広げたり、情報収集をしたり・・・ハブのような存在であってほしいと思います。ベンチャーで上場するのであれば、「誰もしてない事業をやるからこそ意味がある!」という意気込みでやっています。

庄子:
景気に左右されるビジネスは好景気の時はよいのですが、悪い時は一気に落ち込んでしまいますので、バランスは難しいですよね。ベンチャー企業でIPOしようという会社は、もともと受託開発でコツコツと売り上げを上げてきた会社が多いですね。で、「よし、新規の事業をやるぞ!」という意気込みをもってプロジェクトを立ち上げるのですが、一番つらいパターンは、(今までの)受託事業なのか、新規事業なのか、経営資源の配分がどっちつかずになってしまうパターンですね。
受託を自社でやりつつ、新規事業も!ということになると、現実的に事業計画を作れなくなってしまう、かといって労働集約的な受託開発のみで成長曲線を描いていくのは難しいですね。

株式会社コスモクリエイト 保坂さん:
私も、新しいこと、新しい事業にチャレンジしようと思うのですが、新しいことに関して、売上などもそうでしょうが、100%自分自身のリソースを注力できないというジレンマがありますね。

庄子:
ひとつの会社で事業のセグメントが複数ある場合、その事業間でシナジーがあれば伸びていくと思います。
しかし、事業間でシナジーがなく、バラバラの事業を多角的にやっている場合、この会社って一体何屋 さんなの?と評価しにくく(株価がつけにくい)なると思います。ですから、ある程度の事業の整理は必要かもしれません。(特に起業家タイプは)儲かるから、と思って色々なことに手を出していく傾向にあります。そして、経営者としてのリソースが分散されます。ただ、ひとつのビジネスだけだと、上場後のエクイティストーリーや成長戦略を作りにくいですよね。

大内:
上場時は、どの分野で儲けるのか、事業分野を明確にすることが重要です。投資家はシンプルで分かりやすい企業に投資する傾向がありますから。

大川さん:
ところで、未来予想さんはIPOするのですか?(笑)

庄子:
クロスコープのご入居の方々をはじめ、起業家のみなさんのためになるならIPOします(笑)
優等生の回答になりますが。私達が調達したリソースを成長されたいクロスコープの入居企業様に色々な形で提供することで、ベンチャーが成長するプラットフォームになれればと考えています。
そのプラットフォームを大きくするためにIPOが必要な手段であれば迷わずにすると思います。

大川さん:
手法として、データセンターなど既存設備を使わせてあげている会社もふえていますね。

庄子:
無料で何か開発して、原価の費用だけを負担していただき、儲かったらレベニューシェアをしましょうというビジネススタイルの会社も増えてきましたね。完全成功報酬型でECサイトを作る会社さんもありますしね。
CARPE・FIDEM 大村さん:
ベンチャー支援のためにということですが、どういう形でご支援されていくのですか?

庄子:
出資の場合もありますし、海外に進出した時の足がかりとなる場所や人材なども提供できるようになりたいですね。例え小規模の会社さんでも、私達が支援することで100年継続する会社を目指して、一緒に頑張っていけたらと考えています。

大内:他に何かございますか?

庄子: では、本日はありがとうございました。